Chapter 4


きけんな国?

Poco a poco

《Part.3》


" Poco a poco " (ポコ・ア・ポコ =「すこしづつ」の意)というインカの民芸品の店がリマにあります。
ペルー通の方にはもうおなじみの店です。
 オーナーの早内さんは25年前ペルーに来て気に入り、ここに住みついてしまった、「ペルーにはまってしまった日本人」の草分けのような方です。
 その後結婚された、やはり日本人の奥さんはインカの伝統を取り入れた織物を自ら織って好評を得ています。
以前、東京の銀座で開いた個展も大変評判がよかったそうです。
 この間その店に連れていってもらいました。
ある集まりで" Poco a poco "のご夫婦と知り合いになったのですが、リマの地図をよく知らない上、まだ一人では(知らないところに)出かけない方がいいと釘をさされていたのです。
 連れていってくださった方はSra.坂口(シニョーラ・サカグチ)という日系の婦人で私よりさらにひとまわり年配の方です。
かつて“日系婦人会”の会長をつとめた方だけあって、こちらの事情に精通している上、実に配慮が及びかつ世話好きの方です。
 日本語の仕事であちこち回るときも先々と手配していただき実にスムーズに事が運んでいるのもみなこの方のおかげといってもいいくらいです。
 どちらかというと、あまり目立ちたがらない方のタイプですが、人柄からか知人が多くその点でもありがたいです。
 " Poco a poco " を訪ねたときもそうです。
店は全く普通の家で、看板も何もなく他の家と同じように大きな木の扉があるだけです。
こちらでは“表札”というものは一切なく、“番地”を表す3桁か4桁の数字が門か扉に書いてあるだけです。
 旅行地の民芸品店を想像し、店先にもいっぱい品物が並んでいるとばかり考えていた私には全く予想外でした。
 その扉の横にあるブザーを鳴らし、出てきた使用人の女性に
「坂口です。カナエさんいる?」
「はい、どうぞ」
というやりとりのあと案内され庭を通って「店」に入りました。
1階と2階にさまざまな民芸品が所狭しと並んでいて、奥の小さな作業場では織物の加工の作業をしています。
チチカカ湖のあたりの葦で作ったと思われる小さな籠や小銭入れなどの安くてかわいい小物いれから、アルパカを使ったセーターなどの少し高いものまで、どれも買ってしまいそうなものばかりです。
もちろん民族楽器のケーナやサンポーニャも〜。
 横道にそれますが、アルパカはこちらでも高く、なかでも「ベイビーアルパカ」(なぜか“ベビー”でなく“ベイビー”と発音するのがなんとなくおかしいです。)はもっとも高級品とされています。それでも日本で買う値段を考えると信じられないほど安いです。
 いまのApartamentoに引っ越すとき寝具を揃えるのでいろいろ買い物をしました。
通りがかったインカ民芸店ばかりのマーケットに立ち寄ったときベイビーアルパカの毛布を売っていてデザインもよかったので値段をきいてみたら「90ドル」でした。
 そのときは他の買い物でいっぱいだったのでそのまま帰りましたが、こんどそのマーケットに行き他にも気になるものがたくさんあるので物色しようと思っているところです。
 " Poco a poco "の1階のコーナーはインカの象徴でもある金や銀(銀はとなりのボリビアの方が有名だそうですが)を使った細工もあります。
 ちょうど日本からのツアーのグループが来ていて、(ご多聞に漏れず年配の女性やご夫婦中心でした)婦人方にはアンデス風の肩掛けやスカーフなどに人気があったようです。
「でもあんまりゆっくりは見ていられないわよ。6時までにはホテルに帰らなくちゃ・・・。」
などとささやきあいながら忙しく物色していました。
 カナエさんも次々受けるお客の質問に答えるのに忙しそうでした。
私はそれをいいことにいろんなものを触って確かめながら、こんど来たとき買うものの品定めやカナエさんに聞いてみたいことなどを頭のなかにインプットしておきました。
シニョーラ坂口は「今日は岡田さんにここを紹介にきたの。こんどゆっくり来るからね。」とカナエさんに話し、自分の買いたいものだけさっさと買ってあとは早内夫妻の内輪話をそっと私に教えてくれたりしていました。
 店を見て回ってわかったのは、私たちが入ったのは裏口で、表は別にあったのです。
ところがその表口も常時は開けていなくて、客は前もって電話し時刻と名前を連絡した上訪問しなければなりません。
 もちろん店は商売なので客にはたくさん来てもらいたいのですが、やはり防犯のこともあってそういうシステムにしたそうです。
以前は普通に常時あけていたそうですが店が大きくなり、金銀細工なども扱うようになったこともあるようです。
 ついでの情報ですが" Poco a poco "は民宿もやっていてリマに滞在するときは高いホテルでなくこの民宿に泊まれば安くてしかもペルー情報も聞けていいかと思います。
カナエさんは料理の腕もよくて宿泊客には評判です。
 運良くご主人がいれば25年のペルーで知り尽くしたスペシャル情報が聞けるのですが
シニョーラ坂口によると彼はいつも外を出歩いていてほとんど家にいない。
カナエさんに聞いてもわからないことが多いそうです。
 わたしもいずれクスコ・マチュピチュ、プーノ(チチカカ湖)、ナスカ、イキートスなどを訪れる際の情報を聞きたいのですが、はたして彼がいつつかまえられるかわかりません。
 ここでは" Poco a poco "の入り口のことを防犯との関係で書きました。
いまのApartamentoの近くに小さな民芸の店があります。
この店の場合も入り口は開いていません。
普通の家と同じに鉄柵の扉がありそれを押し開いて入りさらに庭を数メートル進んだところに玄関があってその扉を開けて入ると商品が並んでいます。
玄関の脇に小さく“Artesania”(民芸品)とあるだけで気をつけて見ないとわかりません。
時間も午後2時から4時までしかやっていず、どちらかというと民芸品を売るというより小物などを作っているところのようです。
 それでも日本のように“店先に商品を並べそこに人がいない”などということはこちらでは防犯上考えられないことです。


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