Chapter 3


きけんな国?
《Part.2》
キケンがあるところには防犯対策もあります。
リマに着いて一夜があけホッとしていると、近所から聞きなれない音が聞こえてきます。
ピーピー、ピーピーそれからピーポー、ピーポーだんだん大きくなってやがてウーウ、ウーウ。とけたたましく。
救急車でもないしパトカーでもなさそう。
そのうちいつのまにか止んで静かに・・・。
はじめは何の音だかわからないままフシギに思っていました。
とりあえず身の回りの整理もついて2〜3日したころお世話になっている日系人の方に聞いてみました。
「ああ、あれですか。くるまの盗難防止ですよ。」
ここでは車もよく盗まれるのでドアが開いたり、車体に振動があったりすると自動的に警報音が鳴る仕組みになっているのです。
持ち主が使うときは前もって警報音をオフにして、鳴らないようにするはずなのですが、けっこうルーズで、それをしないまま構わずドアを空け、音が鳴ってからオフにする持ち主がいるので、一日に何回となくこれを聞くことになります。
最近は慣れてなんとも思わなくなりましたが、静かな住宅地で突然鳴り出すと一体何が起こったのかと一瞬ビックリしてしまいます。
そういえばこのシステムのことは以前日本にいたときラジオで聞いたのを思い出し「これのことだったのか」と納得しました。
ラジオ英会話のやり取りの中でニューヨークに住む主人公がこの音に悩まされるシーンが出てきました。
ニューヨークのビルの間では風が強く、そのため何台も置いてある車の警報音がそれに反応して夜どうし鳴りつづけ眠れない〜。というのです。
リマは気候が穏やかで強い風が吹くことは全然ないですが、子供が乗ったり触ったりすることは多く、持ち主の警報音の切り忘れ以外にもよくこれを聞くことになります。

 私が日ごろ出入りする「日秘(にっぴ)文化会館」(秘=秘露<ペルー>の略)の入り口には空港の検査システムと同じ装置があり、「会館」(と当地の人たちは呼んでいます)に入るとき持ち物をそこに置き器械のチェックを受けます。
警備員が常時いて見ています。
毎日出入りして顔見知りになっている人も例外ではありません。
 この頃は私の顔も覚えてくれニッコリ“コンニチハ”とか“Buenas dias”などと声をかけてくれますがやはりバッグはその器械を通さなければなりません。
 私などはまだ新米ですから全然かまいませんが、お世話してくださっている方は顔見知りどころか会館の幹部で、言ってみれば会館の経営者みたいな立場の人なのに、やはり一々同じ事をしていてちょっと気の毒な気がしてしまいます。

 「警備員」はこの国の特徴のひとつです。
大使館の警備が厳重なのは先の人質事件などから当然ですが、まず入り口に窓口があって、用件と名前を告げ、警備員が大使館側の面接者に確認を取ると鉄柵の通過を許され、次にコンクリートの狭い入り口の廊下の窓口で身分証明書を預け、チェックが済むと3人いる警備員が館への最後の入り口をあけてくれて入る〜という手順です。
 大使館は別として、その他のちょっとした建物にはたいてい警備員がいます。
銀行・病院・「日秘文化会館」のような半公共的な建物・私の住む小さな団地の出入口・ちょっと大きなレストランなど。
 「レストランで警備の人たちに見守られて食事をするのはあまり気持ちがよくない」という日本大使の夫人の話を聞いて、もう慣れっこになっているこちらの日系人の人は「そんなものでしょうか」と首をかしげていました。
小さなレストラン、たとえば日系1世のやっているすし屋さんにも入り口に警備員を置いています。
また住宅地でも少し高級な個人の家で私設の警備員を使っているところもあります。
 毎日行くスーパーの途中の広い通りに面して、あまり大きくない10階建てのビルがあり、その前にはいつも機関銃をもった2人の警備員がかまえています。
通りに面した鉄柵の数メートル奥にあるそのビルには何の表示もなく、ビル自体も他のビルとちっとも変わったところがないので何をしている所か全然見当がつきません。
ときどき出入する人もきちんとした服装をしていて、乗る車もちゃんとした車という以外の判断材料はないです。
 はじめ、機関銃を見てちょっとイヤな感じがしましたが、毎日見ていると別になんということもなくなり、このごろはその拳銃の前を平気で通りすぎています。
 至るところにいる警備の人員は社会的に見ると実に無駄な支出ですが、これもこの国の実態には違いありません。



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